被害届を出すとは
端的に言うと、被害届を出すことは相手を犯人(容疑者)として扱うことになるそうです(警察官より)。より一般的な意味は、こちらをご覧ください。
その人が犯罪者になるかどうかの判断の最初の権限があるという、とても重大な判断だと一瞬にして感じました。
私が今回、被害届を出そうと思った一番の理由は「あんまりいい人ではないようですよ」と警察官が言ったひとことです。前科があるとか常習者だとか、明言はされませんでした。緊張の中そのひとことで考えが変わり結論が出ました。今後、他の被害者がでないためにも、もっと悪質な被害者がでないためにもと思い、きちんと記録してもらおうという考えで、私は被害届を出すことにしました。
本来自分が被害にあったその1件で判断すべきことだからその人が過去に何をしているかどうかは、私の判断基準になっていはいけないのだと思います。それもあってか、現場の警察官もはっきりとは言いませんでしたし、そのあとの取り調べの時も、似たようなことを言っていました。裁判になったときにはじめて、検事や裁判官が判断することなのでしょう。
しかし、被害者自身も今回1件の当事者ではなく社会の一人です。もっと悪質な事件の被害者がいたとしても、捕まえることができなかったり被害届が出せなかったりというケースは多くあると思います(友達に聞くと、ほとんどの人が1回か2回はそんな経験をしています)。運良くか(悪くか)捕まえることができたのだからきちんと議論して判断してもらったほうがいいのだろうと思いました。
人間違いをしていないこと
今回は、お尻を触っているその手を掴むことができてしまいました。手を引っ込めたり逃げようとは全くしていませんでしたので、確かに触っていた本人です。本人かどうか確信が無かったり、やっていないと強く否定されたらまた状況は変わっていたと思います。
おかしいのが電車を降りたあと。駅事務所へ行くまで、一人のスーツ姿の男性が捕まえてくれていたんです。で、どどどどっと数人の駅員がきた時にひとこと、「どちらの男性ですか?」と。おいおい。でも確かに、犯人は逃げるそぶりも無いし、スーツ姿のサラリーマンの痴漢も多いようだし。その朝の通勤の貴重な時間を割いてくださった方には深々とお詫びとお礼を伝えました。
みなさん、人間違いには気をつけましょう。されないように、しないように。
取り調べ・事情聴取で何をするのか
どちらの言葉も同じことのようです。取り調べの方が、犯罪者っぽいですが、被害者の場合にも使うようです。
これ、時間がかかります。場合によるとは思いますが、私の場合は5時間かかりました。最初は1, 2時間だろうと思っていたら甘かった。でも、時間がかかるからといって、諦めたらいけないんでしょうね。
これらを口頭で言うと、取り調べにあたった警察官が書類にする(私が書いたかのような一人称で記述)この書類作成にとっても時間がかかりました。
- 氏名、住所、年齢、職業、身長などの基本情報
- 時間と場所を正確に(何時にうちを出て駅に着いて、何両目に乗ってとか、そんな普通じゃ覚えていないようなことを思い出さなければいけない....)
- その日電車に乗った目的
- チカン行為の詳細(どんな感じに揉んだとか、さすったとか、避けようとしてもしつこかったとか。ちょっと変だけどね、悪質さの指標のために大事っぽい。)
- どう嫌な思いをしたか(金銭のように数字では計れないけれど、どれだけの迷惑をかけたのかをはかるためには、被害者がどう感じたか、これも大事らしい。それが迷惑行為防止条例の目的だったりするのかな。)
- 現場の位置関係を図に書く(その紙切れは)被害届に添付されました。
写真を撮影
- メモリの横に立って身長(被害者の顔が見えないように後ろ姿で)
- 履いていた靴(距離が物理的に可能かどうかのためなのか、身長に関してはとっても丁寧でした)
- 現場を再現して撮影。犯人と同じくらいの背の警察官が犯人役、マネキンが私の役。で、それを「こんな風でした」という意味で私が指を指したすがたを入れた写真
- 犯人の氏名を聞かされ、知り合いかどうかの確認
- 出来上がった書類に捺印
- 着ていた服を棄てないようにとの指示
- 警察官の名刺をうけとる
5時間の取り調べでは、こんなことをしました。
その日私はたまたま、印鑑と朱肉も持っていたので、その場で作った書類に捺印しました。持っていなかったら、場合によっては印鑑を持ってきてほしいと連絡がきたっぽいです。検察での対応方法次第なのでしょうかね。
服を棄てないようにとは、犯人がもし否定にねがえったときに、物理的な証拠として提出しなければならない可能性があるそうです。人の手には触った生地の極微量の様々な繊維が付いているらしく、犯人の手からは繊維を採取しているから私の服とつき合わせれば証拠としてすぐに使えるそうです。ほぉーーー。
そうそう、わたし、そのとき無職だったんです。山田花子、35歳、無職。みたいな、ね。でも会話の中で私がそんないい加減な人じゃ無さそうと思ったのか、もともとどんなご職業でした?などと聞かれました。書類の身元欄はもちろん「無職」なのですが、詳細を記述する文章の中で翌週から会社員予定、的なことを書いてくれました。内定もらっていてよかった。社会的信用って、こんなとこでも求められるんですね、
おまけ:逮捕者とは
2種類の書類に捺印をしました。1通は、本来の題名はもっと複雑だった気がするんですが、被害届。メインの書類ね。もうひとつは、これも題名は忘れてしまったのですが、私が逮捕者です、っていう書類。へぇーー。
確かに、周囲にいた人が捕まえてくれて、それを届けてくれるケースもあるでしょうからね。
でも、警察官以外にも、人を逮捕する権限ってあったんだ。あとで調べてみると、現行犯に限って、一般市民にもあることを知りました。(調べたウェブサイトが見つからない....)
で、取調室は、いかにもな場所でした(笑)。灰色の事務机に、クリップ式の電気スタンド、背後には灰色のキャビネット。扉はきちんとあるのですが、廊下の突き当たりにパーティションで作った簡単な部屋なんです。場所が足りなくてそこに追加したのでしょう。おかしいのが、人が時々出入りして、PSかEPSとか書いている戸を開けたり閉めたりするんです。中に電話線なんかがあるはずの戸を。多分、荷物入れに使っているんですね。普通の会社がそんなことしたら、ビルの管理会社か電話会社どっちかに、しかられますよね。(でもさ、さすがに警察も、オレ様ルールはダメなんじゃない?安全のために。)とても忙しくて、使える予算も少なくて、その辺の会社員よりも大変だとは思いますが。
あともうひとつ。腰紐を付けた人って、見たことありますか?暑かったこともあり、その取調室では戸は開けたままだったんです。そして、そのすぐ横が少年犯罪かなにかの部署で、取り調べの終わり頃、ほんの2, 3メートル先で若い男性が、青い紐につながれて警察官と一緒にその部屋に入って行くのを見かけました。どきっとした瞬間でした。話しかけると、担当の警察官は、もういつもの見慣れたもののようでしたし、私が捕まえた犯人も、移動のときにはその姿のようです。そうかぁ....。なんか、象徴的な姿で、これまたちょっと切なかったです。